あいみょんはロック歌手
ドラマ『獣になれない私たち』の主題歌があいみょんの新曲だったので楽しく聴く。
あいみょんは女性ロック歌手である。
ロック歌手といってもB’zとかHi-STANDARDとかBUMP OF CHICKENとか、そういう方々をイメージされると「ちょっと違うじゃん!」となる可能性が高いため、同列には論じがたいのですが、私のロック歌手の定義はたいへん広いため、とりあえずあいみょんはロック歌手ということにさせていただく。
あいみょんの特徴
- 落ち着いたギター
- 懐かしいメロディライン
- 全部ひらがなというキャッチ―さ
日本で女性ロック歌手がヒットする2つの条件
あいみょんはヒットした女性ロック歌手としては例外的に「バランスのよい方」である。
個人的な観察によると、日本で女性ロック歌手としてヒットするには主に2通りがある。
「かっこいい」か「かわいい」かである。
身も蓋もなくて申し訳ない。
「かっこいい」の代表例は椎名林檎で、「かわいい」の代表例がaikoである。
あいみょんは広く日本で聴かれていながら突き抜けて「かっこいい」わけでも、めちゃくちゃに「かわいい」わけでもない。
かっこよくもありかわいくもあるのだけれど、どちらかにステータスが偏っているわけでもなく、どちらでも対応できます、といった感じ。
だから、どうしてあいみょんが流行っているのか、私にはその理由がよくわからなかった。
あいみょんがロックで売れた理由
ではなぜあいみょんは売れたのか。
理由はいろいろあると思う。
一つは、楽曲が「なまもの」を丁寧に扱っているということ。
たとえば『今夜このまま』では、「アレください」「いつかの誰か」「このまま」など、具体的な状況がぼやかされ、抽象的な世界観が形成されている。
ぼやかしているがゆえによくわからない歌詞なのですが、これは「よくわからない状況を表現するためによくわからない表現を使う」という特殊な技法である。
換言すると、『今夜このまま』は飲酒をしたときのぼーっとした状態を切り取った歌だと私は理解しています。
生ビールに酔っぱらったという「なまの現実」がある。
それを歌に落とし込むためには、しらふの表現ではどうしても限界がある。
だからあいみょんは酩酊した気分になって歌詞を書いた。
丁寧に、生活に、状況に寄り添って、没入してあいみょんは『今夜このまま』を作ったのだと私は思う。あくまで想像ですけど。
あいみょんの愛
誰も語ったことがない切り口で歌うことができ、その感性によっていま生きている「私たち」をゆるやかに解明する。
これはあいみょんの楽曲が愛されているひとつの理由だと思う。
参考 特殊な能力について内田樹の研究室