「すれ違うベビーカーでまた会おうぜ」がエモい

People in the box 『レントゲン』

「エモい」という表現は2019年の私の流行語大賞である(知ったこっちゃないという意見には閉口する)。

「エモい」は何かによって心を動かしたときに使いたい言葉で、使用感はおそらく平安時代にいう「あはれ」に近いと思われる。

しみじみと感じるのである。

と、いうわけでこの記事はPeople In The Box『レントゲン』を聴きながら書いている。

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表題に掲げた「すれ違うベビーカーでまた会おうぜ」は、おそらく辞世の句である。それも友情関係の。

恋愛関係であれば「来世で結ばれようね」が模範的なお別れのことばであろうが、友情関係のお別れの言葉においてはなんぞや?「生まれ変わってもまたバカやろうや」?

むむ。

模範的ではあるがベビーカー再会のエモさにはかなわない。

おそらくきっと彼らは来世においてすれ違ったその刹那、乳児にとっては不自然なほど器用に口角を上げ、かすかに親指を立てることだろう。

そして、何事もなかったかのように赤ん坊の顔に戻る。

いとエモし。

People In The Boxは何年たっても心に染み入ることよ。

彼らのCDを初めて聴いたとき、私に「エモい」という語彙はなかった。

光陰矢の如し、ついに私は「エモい」を手に入れた。

長生きはしてみるものである。

マイ・ブームが終了してしまったり、バンドが解散・休止してしまったりとしたしても、好きだった音楽を定期的に聴き返すことはすべきなのである。

以前は言葉にできなかった感情を、今度は言葉に顕現させることで陽の下に明らかにできるかもしれないのだ。

そういえば今年はMJが物故して10年。

聴こうぜ。

MJの生まれ変わりはとっくに立ち上がって元気にまたムーン・ウォークをかましているかも知れないけれども。