オタクでない人は「へっへっへ」と笑わないことに気づいてしまった。
中学時代にガンダムにはまったことをきっかけにティーンエイジャーをオタク趣味に捧げてしまった私は、今となっても性根はオタクである。
現在、アニメもゲームもマンガもラノベもインターネットも全盛期の10分の1も摂取していないが、骨の髄まで染み渡ったオタク精神はそうそう簡単にターン・オーバーするものではない。
張り詰めた弓の緊張のように、ふだんはオタク気質を表出しないようにふるまっている(オタクはプライドが高く、なかなか自分を相手に見せない)が、疲れからか、ふとした気の緩みでオタク的行動をしてしまうことがある。
「へっへっへ」と笑うこともそうだ。
一般人はそのように笑わない。
一般人は「は行」の奇数番目を使って笑う。
「はっはっは」然り。
「ふふふ……」然り。
「ほほほ」然り。
オタクは「は行」の偶数番目で笑う。
「ひひひ……」然り。
「へっへっへ」然り。
これは私が自身ないしは周囲のオタクを観察して得られた持論である。
異議は認めるが意義はない。
だからどうしたと言われても甘んじて受け入れる。
何も中身のあることは言っていないのだから。
唯一得られた知見としては、初対面の方がこんなふうに笑っていたら、その方がオタクである可能性はかなり高い、ということ。
嘆かわしいことに、世の中にはファッションオタクというか、オタク趣味をオタク趣味として楽しむのではなく、趣味のうちの一つとして楽しまれる方が増えた。
「俺、オタクだよ」という発言を私は信じない。
私が信じるのは彼らの笑い声である。
汝、覇業の偶数で笑う者なりや?
オタク聖書を作る機会があれば、どこかの福音書に載せたい。